神様からのメッセージ
人生の転機って、誰にも何度かあると思うけど、僕の場合は人に言われた言葉がそれだね。
一番最初は5歳の時。はじめて幼稚園でSLの絵を描いて持ち帰ったら母親が「この絵はうまい!」って。「えーっ?」ってびっくりするぐらい相当オーバーに褒めてくれた。その瞬間、自分は絵が上手いんだって100%思い込んだ。これってすごいことで、上手いと思うから調子に乗ってたくさん描くように。たくさん描けばそれなりに出来るようになるので、さらに勘違いするという循環に。スポーツだってそうで、練習量が多ければそれなりのところには行けるよね。この状態は中学生ぐらいまで続いたけど、さすがに高校生になると「上には上がいる」を認識するようになって。だからその程度なんだよ。大人になってよく「才能のある人はいいよね」なんて言われるけど、僕の場合はそんなんじゃない。誰だって出来るぐらいのことを少し多めにやっただけ。でもそれは母の言葉ではじまったので感謝しかないね。
次の転機は33歳の時。10年勤めた広告代理店から独立して3年目のこと。当時は叔母でジャズシンガーでもある黒岩静枝が所有する事務所の一室を借りてオフィスにしていた。業界的にも忙しい時期だったので毎日仕事に追われていたんだけれど、あるときふとやって来た叔母が「あんた、忙しくしていてなによりだけど、会社にいるときとたいして変わらないんじゃないのかい?自分のやりたいこと、もっとアーティスティックなことをするために独立したんじゃないのかい?」と。これには目からうろこ状態で、しっかり我に返らせてもらった。そして今まではやったことのない、売上げにもならない自主制作をはじめることにした。そうやって作ったポスターが海外のコンペで入選したりして、その後幅が広がっていったんだけれど、叔母のひと言がなかったらきっと違っていたと思う。そんな叔母にも感謝。
3つめは42歳あたり。そのころは仕事で毎日遅かったことに加えて、札幌ADCというクリエイターが集まる団体を作って活動をしていたから、夜のミーティングもそれなりに多いし、そのあとメンバーたちと飲みに行ったりでなかなか早く家に帰るという感じじゃなくて。まだ次女も小さくて妻も疲れてた時期だと思う。そんなころに妻にこう言われた。「何のために結婚したわけ? 結婚って家庭を成長させるためじゃないの?」。この家庭を成長させるっていうのは心に響いたね。家庭を守るとか大事にするっていうのはよくあるけど、成長させるって発想はなかったから。具体的に何をもって成長というのかは今だにわからないけど、この言葉が上昇志向の好きな僕をくすぐったのは間違いない。妻の作戦勝ち。
これらの言葉たちは、母や叔母や妻を通して「こうすればうまくいくよ」と神様が教えてくれたような気がする。普段の会話と違って自分が受けた衝撃があまりに大きいので、はっきりわかる。「これはお告げだ」って。さすがに5歳の時はそこまで意味づけできてないけど、感覚は同じだったね。叔母や妻の言葉は、ある意味批判の意味合いもあるので最初カチンときた。いつもだとイラついて終わりそうなものだけど、なるほどなって納得のほうが大きくなっていったときに、なんだか背筋がぞくぞくするように感じたのは、大いなる何か、サムシンググレートからのメッセージだったからかな。これってただのスピリチュアル好きか。笑