デザインのアイデアを考えるプロセスで大事だといわれているのは、コンセプトだったりターゲットの設定、そしてそこから導かれるキーワードなんかだと思うけど、そんな理屈で説得するのが実は苦手。広告代理店にいた若いころ、プランナーの人が何かの企画提案をするときに、調査分析にはじまって論理的に展開する数十ページの企画書に仕上げてるのを見て、この技術はすごいなと思ったし、これが出来ないと仕事としてやっていけないんだと思わされた。僕は視覚的な発想から入るタイプで、言葉で説明するのが得意じゃないからプレゼンとかにはホントに苦労してきた。質問されても上手に答えられないし。だいたいうまく喋れないから手を動かすデザインの仕事を選んだのにね。ところがデザインをすればするほど、理屈は後まわしになっていった感じがあって。もちろん、どんな人に手にとってほしいとかイメージはするけれど、起承転結みたいに理路整然と説明できるようなすすめ方をしていない。たとえばある食品に使うことが決定しているボトルがあるとする。まずはそれを手に持って眺めてみる。するとそこに貼るシールの形やロゴの位置や色なんかがなんとなく見えてくるって感じ。「こんな形のラベルがなんだか気持ちいい。」「この貼り方がおもしろい」なんていう感情になるから、「きっとこの方向で大丈夫」って思える。たいがいはたぶんそこまでで5分ぐらい。ただこの時点で思いついているのはデザインの原型なので、ここから細かなディテールの調整に時間をかけるんだけどね。でもこの流れを正しく言語化するのはけっこう難しくて、デザインが出来てから「どうしてこうしたいと思ったんだろ?」って思い返しながら理由を考えたりする。直感って「ひらめき」みたいな意味合いもあるけど、僕の場合は何かちょっと違って、文字どおり「素直に感じる」っていうことかなと。リラックスして優しい気持ちになってる感じ。人だけじゃなく全てのものが愛おしく思えるような心境。なんか気恥ずかしいけど。そう、たぶん脳波でいうとアルファ波みたいな。だから「これで儲けてやろう」みたいに打算的な心持ちだとほぼいいものはできない気がする。こんなやり方でけっこうな数の商品をデザインしてきて、それはもう自分にとっては当たり前になっているので、最近は直感に従えば間違いないと信じきってるね。スタッフたちによく言ってる。選択に迷ったときは損得で判断せずに「ワクワクするほうへ」って。スターウォーズのキャッチフレーズは真実を突いてるね。May the Force be with you.